都立大島高校農林科3年の島村杏樹さん、1年の岡田亜華里さん、川島星菜さん、金子雄主幹教諭チームが「第10回全国高等学校観光選手権大会 観光甲子園」に出場し、企画したツアープラン『東京の島伊豆大島TSUBAKI三昧の旅』が『訪日部門』で全国87校227プランの中から見事金賞(準グランプリ)を獲得しました。
今回は、受賞したチームの皆さんからツアープランの概要や受賞の感想などをお伺いしました。
-まずは金賞受賞おめでとうございます!
今回参加された『全国高等学校観光選手権大会
観光甲子園』とはどのような大会なのですか?
今年で10回目の開催となるのですが、毎回設定されるテーマに沿ったツアープランを企画しプレゼンテーションを行ってその内容を競い合うものです。
今年は訪日外国人向けに1週間滞在するツアープランを考える『訪日部門』とハワイの歴史や文化を学び、スピーチと現地取材企画を組み合わせた『海外部門』の2つの部門が用意されていました。私たちは『訪日部門』にチャレンジしました。
-観光甲子園に出場しようと思ったきっかけを教えて下さい
金子先生からの提案がきっかけです(笑)。
金子先生『本校は教育機関として世界で初めて校内の椿園が国際優秀つばき園に認定されて、認定後、国内外から多くの人にお越しいただくようになりました。そして、生徒たちが椿園内で椿ガイドを行うなど観光につなげてきました。そうした活動をさらにPRする場所がないかと考えていた中で今回の大会を知り応募しました。』
大島高校椿園でガイドを行う島村さん
大島高校椿園での椿ガイドの様子
-企画したプランの概要について教えてもらえますか?
企画名は「東京の島 伊豆大島TSUBAKI三昧の旅」と題し、ツアーを組む上で3つのコンセプトを設定しました。それは、
- 島の宝「椿」を徹底的に楽しんでもらう
- 伊豆大島の自然と文化を満喫してもらう
- 島の人たちの絆を感じてもらう
です。
もちろん旅のメインとなるのは「椿」です。
本校の椿園とともに国際優秀つばき園に認定された「椿花ガーデン」や「東京都立大島公園椿園」を中心に椿の花を楽しむスポットを巡るのはもちろん、椿油搾り体験や椿の花びら染め体験など、椿にまつわる体験なども積極的に取り入れています。
また、国際優秀つばき園認定に向けて3園同時申請をきっかけに産官学連携が進みました。その結果、島内の椿油製油業者と連携して本校オリジナルの椿油を製品化するなど、取り組みが進んでいます。そんな経緯もあり、椿油工場の見学もコースに入れています。
椿の優しい色合いが特徴の椿花びら染め
島内の製油業者と連携して作ったオリジナルの椿油
さらに、旅の楽しみの大きなポイントである食についても、椿油で揚げる天ぷらを楽しむ「椿フォンデュ」をはじめ、島ならではの食材を使った郷土料理やグルメを堪能します。
椿以外にも、伊豆大島の自然と文化を満喫して頂くために、日本ジオパークに認定されている伊豆大島ならではのコースもツアーに入れています。三原山トレッキングや日本で唯一の砂漠「裏砂漠」等々、島内各所に点在するジオサイトや懐かしい風情ののこる波浮の町並みなどにも足を運びます。夜は満天の星を楽しむスターウォッチングです。
ツアーを実施するのは伊豆大島椿まつりが開催される1月末から3月末。椿まつり期間中に開催される夜まつりの会場では島の人が訪れる方を楽しませようとさまざまな催し物が行われています。また、椿園内に椿の花を模したランタンを装飾し、美しい世界を作り出す椿ランタンイベントなども開催されています。そんな島の夜も楽しんでいただこうとプランに入れました。各イベントを通じて島の人たちのおもてなしや島の人たちの絆や温かさを感じていただきます。
島をあげて毎年盛大に行われる椿まつり
幻想的な世界をつくり出す椿ランタン
そして、最後に、自分たちがこのツアーが実現したらやりたいこと、教育機関として世界初の国際優秀つばき園である本校椿園を活かした椿ガイドを英語で実施します。
-すばらしいですね。まさに、椿を中心に伊豆大島を思う存分満喫するツアーですね!
今回見事決勝に進み、さらに金賞受賞ということで、結果についての感想をお聞かせください。
島村さん「グランプリが獲りたかったです(笑)。でも、金賞も凄いし十分PRになると思っています。あと、グランプリを獲ってしまうとそこで満足してしまいそうですが、金賞の場合はまだまだ伸びしろがあると思いさらに頑張れる気持ちになれるので良かったと思います。」
岡田さん「私もやっぱりグランプリを獲りたかったです。」
川島さん「私も正直グランプリを獲りたかったのですが、練習以上のプレゼンが出来たので、悔いはないです。それよりも、ここから次につなげていくことが大切だと思っています。」
-今回のプランは実際にツアーとして商品化されるお話はあるのでしょうか?
はい。そのまま訪日外国人向けの7日間滞在型ツアーとしての商品化は難しいのですが、プランからいくつかピックアップして組み直すなどしてツアー商品として提供するお話を頂いております。
-今回の受賞をきっかけに何かご自身の中で変わったことはありますか?
岡田さん「自分は1年生で農林科に入ったばかりですが、金賞を獲ったことで『農林科って凄いね!』って言われることが嬉しい。農林科の知名度も上がったかなと思っています。」
川島さん「ずっと島に住んでいるんですけど、今まで島の良いところを聞かれてもすぐに応えられなかったのですが、今回ツアーを組んでいく中、島中をまわって写真を撮ったのですが、“あぁ、この場所いいなぁ”って思ったりする場所に出会えて、あらためて島の良さを知れました。島に対する私の考え方が変わったかなと思います。」
-皆さんの将来の夢について教えて下さい
島村さん「私は、将来花卉農家になりたいと思っています。ただ花を作って終わりではなく、花卉栽培を通じて島を盛り上げることをしたいです。」
岡田さん「私は、大島で野菜農家をやりたいなって思っています。花とかも栽培して地域に貢献したいです。」
川島さん「まだ悩んでいるのですが、今のところ森林や草花に興味があるので、そういう方向に行きたい。そして、いつか島に貢献したいと思っています。」
-最後に伊豆大島に暮らす皆さんにとって、伊豆大島の魅力とは?
島村さん「私は、大島はすごい綺麗だなと思います。島に帰ってくるとまず思いっきり息を吸いこみます。あと写真を撮るのが好きで、海で写真を撮ったりするのですが、同じ場所なのに毎日違った風景に出会えるのが魅力だと思います。」
岡田さん「私もその日によって景色が変わるのが魅力的だと思う。海も綺麗で都会と違って空気も綺麗だし、緑も多く目が癒されます。」
川島さん「海と山の自然が豊かなのが魅力。私も写真を撮るのが好きで秋とか夕日がとても綺麗で、毎日違った表情が見れます。自然が豊かだからこそ見える魅力、島に暮らしているからこそ見える魅力があると思います。」
-ありがとうございました。
今回、金賞を受賞された企画ツアー「東京の島伊豆大島TSUBAKI三昧の旅」は、伊豆大島に既にある資源を徹底的に磨きあげて組み合わせることで、とても魅力的なツアーを組み上げているのが印象的でした。決して無理をせず、しかしながら既にある地域資源を大切に守り育み伝えていくことを怠らずに続けていく。その努力の積み重ねが今よりももっと魅力的な地域へと成長させる近道なんだと、彼女たちにお話を伺っている中であらためて思いました。
最後に彼女たちのプレゼンテーションをどうぞ!
それでは、最後に金賞を受賞した大島高校農林科による企画ツアー『東京の島伊豆大島TSUBAKI三昧の旅』のプレゼンテーションをご覧ください。
「大きなスクリーンに映し出されるスライドには各関係者の方々よりご提供頂いた画像や、東海汽船様よりご提供頂いたオープニングをはじめとする大島ゆかりの音源、そして、エンディングで流れる大島在住の映像作家キムさんのオリジナル動画など、さまざまな方にご協力いただき、このようなすばらしいプレゼンテーションが実現できました。ありがとうございました。」と金子先生はお話されていました。
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