子どもたちに本物の体験を提供する団体「本物プロジェクト」が、伊豆大島体験型ツアーを企画。夏休み前の週末に、小中学生50名とスタッフ10名が船中1泊を含む3泊4日で大島の大自然を遊び尽くしました。
伊豆大島を選んだ理由
ふだん子どもたちが過ごしている日常は、親や大人が何かとお膳立てしてくれるため、実は、子どもにとってクリエイティブな発想が生まれにくい環境。
また、TVや携帯やSNSからどんどん情報が目に入ってくるので、子どもが自由に発想するチャンスが奪われている状況でもあります。
そこで、そんな日常から子どもたちを引き離し、親とも離れ、TVや携帯にも触れない環境のなかで、五感で感じ、自分で発想し、そして主体的に仲間と関わり共に行動していくような機会づくりが大切になるのです。
非日常の環境のなかで、仲間と共にたくさんの「初めて」を経験して、「自分で考えて行動できる子ども」になっていくような旅をつくりたい。
そんな思いで、子どもたちの旅の舞台として選んだのが伊豆大島でした。
金曜日の夜に大型夜行船に乗り、東京の夜景を洋上から見送ってから船中で就寝。
そして一夜明けてたどり着く、火山に育まれた大自然の島。
都会から近いのに、「まさに別世界に来た!」を演出できる伊豆大島は、子どもたちを自然とアクティブに、そしてクリエイティブにしてくれます。0から何かを生み出す力を身につけるのに最高のロケーションだと思います。
旅づくりで大切にしたこと
あえてスケジュールを空白に
企画段階で一番注意した事は、大人が予定を決め過ぎないこと。
予定を作って与えれば、それは都会にいる環境と同じ。
逆に島では、できるだけ自由な時間をあえて設定することで、子どもたちが自分で考え行動する環境づくりを軸にしました。
何もない時間をつくることによって彼らの無限の可能性を引き出すことができると思うからです。
- あえて自由時間を多く設定し、子どもたちが自分で考え自由に遊べる環境づくり
- 人から与えられたものではなく自分で決めたことだからこそ、行動に責任ある事を学ぶ
- 共同生活を通じて、社会の中での自由とは何かを学ぶ
- たくさんの【初めて】を体験する
分単位で日程を決めて子どもたちにスケジュールを消化させるような旅行ではなく、あえてスケジュールの大部分を空白にして、その行間を参加した子どもたちの創造性で埋めてもらうような考え方で行程を検討しました
自由の中から学びを得る
旅のイメージとしては、普段のこれはダメ、あれはダメ、と当たり前のように時間や行動を管理された生活とは真逆の、朝から晩まで遊んで、晩御飯を食べながら寝てしまう、お風呂も入らず、気がついたら朝のような生活。
その生活から自分の身の回りの事や自分の体力を考えながら自分で時間を管理する。
そこから自由=何でもあり、ではなく、自由には責任を伴う事を体感してもらう狙いです。
そして、伊豆大島での「初めて」体験を通しての達成感や感動の共有、そして自分の殻を破る経験。
例えば、初めての「船旅」、初めての「親と離れて3泊」、初めての「島生活」、初めての「テント」、初めての「最初から最後まで自分でBBQ」、初めての「夜中、ゆっくり星を見る」、初めての「達成感」など。
企画終了後の感想にも、たくさんの「初めて」体験に対する喜びの声が多かったのも伊豆大島という場所の力かもしれません。
行程表
旅の様子
行きの船
初めての大型客船!しかも夜23時出発。普段ならもう寝ているこの時間に、大勢の仲間と海の上。この状況で普通、眠れます?眠れませんよね。(笑)
乗船して大興奮、甲板に出てまた大興奮。スカイツリーや東京タワーを船から見送りつつ、ライトアップされたレインボーブリッジをくぐり抜けると、一気に船旅気分が盛り上がります!羽田空港沖では頻繁に離着陸する飛行機を間近に見てまた大興奮(笑)
そして夜が明け、朝が来れば、そこには、別世界が待っています!
日の出浜
透き通った青空の下で、日の出浜の堤防からダイブ。
見て!この顔。勇気をふりしぼって飛んだ、ひとまわり成長した瞬間です。
大人からみれば、そんな高くはないのだけど、この子にとってはとても高い場所なんです。
ここは、日の出浜沖の人工の浮島。足のつかない海を、泳いて渡ることのできる者だけがたどり着ける場所。秘密基地みたいな感覚が生まれます。泳いで渡ることができなかった子には、「来年こそ、あそこに渡れるようになりたい!」そんな気持ちが生まれます。
自転車で大島一周
大島1周約50kmにチャレンジする中学生男子チーム。
朝6時から日の出浜で泳ぎ、9時から大島1周にチャレンジ。
まずは南部のトウシキを目指します。
トウシキではめちゃくちゃきれいな海に感動。「まるで水族館みたい!」
昼食後、地獄の1時間半続くアップヒル(上り坂)を越え、気持ちよく下ってゴール。
これを経験すると、もう何でも耐えられる気がする!
人生で一番長い上り坂。表情だけでなく、腕の筋肉、汗のつやが、アップヒルの過酷さを物語る!
釣り
岡田港で初めての釣りにチャレンジ!まずは基本のサビキ釣り。コマセをカゴに入れて、サビキ仕掛けを投入。ぴくぴくとしたアタリを感じて、「キター」って声をあげる。初めての釣りに大興奮。おっ!隣りでは、釣り慣れた仲間たちが、別の釣り方をしているぞ!
中級者はカゴ釣りへとステップアップ。オモリを付けて投げる練習をしたら、いざ仕掛けを投入。
浮きが、スーっと海に吸い込まれ、竿をぶんぶんもっていかれる。
気合いで取り込んだのは、40cm級のサバ!BBQの食材は、ばっちり確保だね!
きっちりさばいて、各班に配給。塩焼きで食べました。
海のふるさと村
2日目の晩御飯はカレー!全員の力をあわせ、炊事開始!さて何時に食べることができるのか!?
薪割りは男子の仕事!ではありません。女子だって、薪割りしたいっ!薪を持つ手に軍手を二重にはめて、安全を確保。「エイッ!」きれいに割れた薪が積み重なっていきます。
米を炊くのは男子の仕事!参加者全員のエネルギーを支えるのは君らの仕事だ!大きな責任を肩に背負って、まずは薪を組み、着火。うちわで扇ぎ、火を徐々に大きくしていく。火の底なしの魅力にとりつかれる彼ら(笑)
難敵、玉葱との戦い。泣きながら包丁で切り続ける中学生女子。さすがに、カメラを構えても笑えないよね。洗い物はささっと。ちょっとした合間に仕事ができてしまうのが、ステキ。
具材を炒めよう!日も暮れ、外は真っ暗。お腹が空き具合もクライマックスに。あともう少しだ!
さぁ、最後の味見。かまどの前で、ゴーグルは必須アイテム!?風向きに関係なく、煙を気にせず仕事をすることができます(笑)
やっと食べることができる!いただきまーす!美味いぞー!!!!たくさん、おかわりしろよー!
キャンプファイアー
最終日の夜はキャンプファイヤー。ふるさと村には劇場型のステキなファイヤー場があります。
もっと声を出せ!空に届く声を出せ!もっと、もっと!
全員がファイヤーを取り囲み、体に残るエネルギーを全て出し尽くしました。これで全てのイベントが終了!???
いやいや、これから夜活動の始まりです(笑) 花火をしようぜ!流れ星を見ようぜ!夜釣りに行こうぜ!
シュノーケリング
ふるさと村から大島公園までは、「海のふるさと」号で移動!スタッフの方々がとても親切に対応してくれました。
秋の浜では、高さ4mの飛び込み台から、勇気を振り絞ってジャンプ!思ったよりも滞空時間が長いんです。
最初は怖くて、尻込みしていても、一度飛び込めば、やみつきに!登っては飛んでが止まらない!
2日目はシュノーケリングツアー!泳ぎに自信のない子は「野田浜」で、泳ぎに自信のある子は「秋の浜」で。ダイビングショップ「オレンジフィッシュ」のスタッフの方々が、シュノーケルなど機材の扱い方を教えてくれます。
準備ができた子から、海に入ると、そこにはたくさんの魚が!感動体験間違いなし!
お昼ご飯は、絶景の海を前にしてお弁当。ぺろっと食べ終わりました!
最終日
3泊4日!すごく楽しかったね!総勢60名、無事に帰還することができました。ひとまわりも、ふたまわりも大きくなって帰りました。一番印象に残った保護者の言葉。「子どもがキラキラして帰ってきました!」
大きなリュックとたくさんのお土産の袋を抱えて、船に乗船。「また来年来るよ!」
【準備】 「旅づくりの検討あれこれ」
運営内容を踏まえて現地視察を実施。
観光協会などに相談しながら準備を進めました。
大島の方々のホスピタリティーが本当に素晴らしく、会う人会う人素敵な方ばかりでした。
お盆のピーク時期での実施となったため手配中は難航しましたが、観光協会をはじめ、伊豆大島の人たちに助けられ、島に関わる人の温かさを感じられました。
一般社団法人大島観光協会
営業時間:午前8:30~午後5:00
お問合せ:電話:04992-2-2177/FAX:04992-2-1933
〒100-0101
東京都大島町元町1-3-3
船
行きは大型客船、帰りはジェット船を利用。団体割引を適用しました。(15名以上で最大30%割引)
宿泊
大人数を収容できるキャンプ場併設の宿泊施設「海のふるさと村」
デッキテント、セントラルロッジ、さらに人数を増やしたければ、フリーテントサイトにレンタルテントあり。
炊事場完備、レンタル道具が豊富、キャンプ場宿泊者にはBBQセットが無料貸し出し。
シャワーや劇場型のキャンプファイヤー場あり。
夜星を見上げれば流れ星が流れ、海に行けば夜光虫が見える。
スタッフの方もとても親切で、人間味あふれた感じが好印象。
また、ふるさと村の大型バスで大島公園からふるさと村までの送迎あり。(ただし時間が限られるため、その時間にあわせて予定を組む必要あり。)
食事
BBQ用の食材は、海のふるさと村近隣の商店で準備してもらうことも可能。
前日まで注文すると当日の夕方には届けてくれます。
(問合せ先:武田商店
04992-2-8417)
もちろん、自分たちで食材を購入し持ち込んでもOK!!
朝食の食材(菓子パン等)は島内のスーパーで購入(まとまった数の場合、事前予約が望ましい)。
お弁当は「イズシチ丸」(04992-2-0701)にて手配。
レンタサイクル
事前に人数分を予約。
島内のレンタサイクル店
安全管理
観光協会に緊急時の対応を確認しておく。
緊急時の病院は元町の「大島医療センター」
雨天対策
雨の日対策として、北ノ山出張所の体育館を事前予約。窓口は大島町役場の教育文化課(04992-2-1453)。
大人数を収容できる学習施設としては、元町の「火山博物館」も。
アクティビティ
観光協会からダイビングショップを紹介してもらい、50名シュノーケリングツアーを実施。
子どもたちにとって、プロの方に教わって、海に入るという経験はすごく貴重な体験になりました。
伊豆大島のダイビング情報
写真撮影
大島在住のカメラマンに、旅の様子を撮影してもらうように依頼。
企画後に保護者に子どもたちの素敵な笑顔の写真を届けられたのは大きい。
カメラマン 田村 寛
1977年
東京生まれ。
CDジャケット撮影や舞台やライブ撮影を中心に活動。活火山のエネルギッシュな自然に感銘を受け2003年から伊豆大島に移住。
連絡先:studio_h@themis.ocn.ne.jp
参加した子どもたちと保護者の感想
子どもたち
- 帰ってすぐ沖縄にいったけど「大島の海だって沖縄にひけをとらない!」シュノーケリングが楽しかった。
- 楽しかった!船旅、釣り、初めてのことばかりだった。水の綺麗さが違う!また行きたい!
- 初めてづくし。釣りも初めて、シュノーケリングも初めて。新しい友達もできた。
- 帰りたくなかった
- 楽しかった。キャンプ自体初めて。外で寝たことも初めて。
- 1週間いてもいい。あの夜の自由な感じがいい。何をしても何も言われない感じ。
- 楽しいから、疲れているなんて忘れちゃう。
- 道路に寝っ転がってみた星が綺麗だった。
- 睡眠時間 船3時間、テント6時間、ロッジ1時間 合計10時間/3日
保護者
- 出発から解散まで一部始終を家で話してくれた。親が感じることは、帰ってきてから、娘の心持ちが変わったと思う。成長した感じがある。例えば、兄弟のこと、お母さんとの関係、お父さんとの関係。何かが少しずつ変わり始めているのを感じる。親として行かせてよかったなぁと思う。
- 親がいなくて、はじめて気づくことが沢山あったと思う。こういう体験は必要
- 帰ってから、ずっと話していた。また機会があれば絶対に行きたい!親も行かせて良かった!って本当に思える。
- 家族だと、本人に何かを任せることはない。そういう意味で、全て自分たちでやる今回の企画はいい機会になったと思う。
- 一人っ子ということもあり、親が一緒だとどうしても手を出してしまう。こういう経験は貴重。
- 家では、お父さんがインドア派なので、こういう経験がほどんどない。ありがたい。
- キラキラして帰ってきました!肌は真っ黒でしたが(笑)
- 家ではできない、すごいことを沢山やってきた!と話してる。今回の旅で男の団結が生まれたようだ。
- カメラを持たせたが、1枚しか撮ってこなかった。。楽しすぎて、写真を撮るのを忘れていたのでしょう。
- キラキラして帰ってきました。そして帰ってすぐ、また来年行っていい?って聞かれました。
- 遊んで、楽しみ過ぎて疲れた。そんなに家では語らないけど、見ていて体でそう語っている感じ。
- もの凄く楽しかった。たまには写メ送ってねって言ったのに、1枚も送ってこなかった。楽しすぎて、そんなこと忘れちゃったみたいね。
- 帰ってきたら、抜け殻でした(笑)みんなと一緒っていう経験は、家ではできないので、いい経験になったなって思います。
主催者の感想
笑顔があふれた4日間でした。
子どもたちは、スッカラカンになるまで、全力で4日間を楽しんでいました。
島の人とのつながりを感じることができる最高の時間であり、伊豆大島という環境は、この企画にとってベストな場所でした。
企画段階で想像していた心配も全くなく、改めて子供たちの創造性や行動力、そして可能性を感じられた時間でした。(携帯を規制するかどうか?を話し合っていましたが、そんな心配も無く、携帯を使う時間があったらもっと遊ぶ!携帯は暇つぶしの道具という言葉が聞けたのは嬉しかった。)
更に、子供たちの無限の体力を体感した。睡眠時間を削っても、目の前に楽しいこと、本気でchallengeしたい事があると、体力も気力も無限。
見事に日程の行間(空白)を、自分達で作りだし、限界を超え、自分の殻を破っていく姿を見ることができたことを嬉しく思います。
そして、子供たちの人間力を上げるために、大人(親)ができること、大人がすべきこと、手を出さないことなどを考えさせられる良い時間になりました。子供たちが自分で何かを作り出すのに大人の介入はマイナス。無限の可能性は既に子供が持っている。
その子供の可能性を引き出せる環境づくりが大人の役目かもしれません。今後も子どもたちに色々な「本物」を提供する企画を続けていきたいとおもいます。
本物プロジェクト 代表 鈴木嘉記