さばくのは一苦労、しかし、それを上回る美味い魚
今回ご紹介するのは、“サビ”というお魚です。このお魚の標準和名は「クロシビカマス」といいますが、全国的にも「スミヤキ」と呼ばれたり、「エンザラ」と呼ばれたり、実にさまざま。伊豆大島でもサビが訛って“シャビ”と呼ばれたり、南部地区では“ナワキリ”と呼ばれたり、“タチ”と呼ぶ地域もあるそうです。
旬は水温の低い11月頃から2月頃までで、この時季に脂がのって最高の状態となります。
このサビ、温帯から熱帯に広く生息し、普段は150メートル以上の深海に棲む魚です。
写真のとおり、見た目はなんだかグロテスク。鱗はなく、鋭い歯を持つ肉食性の魚です。縄を切るほど鋭い歯を持つことから“ナワキリ”と呼ばれているのだとか。皮は黒いが身は真っ白で、マグロのトロを思わせるクセのない旨みを含んだ脂が最高に美味しい魚です。
しかしながら、この魚は皮から身に向かって長く硬い骨が伸びているので、三枚におろしただけでは非常に食べにくいのです。そこで、皮の方から細かく包丁を入れる背ごしという骨切りの下処理を行います。
刺身、焼き、煮付け、どんな調理でも美味しい
サビは島内の飲食店や居酒屋でもよくメニューに並びます。写真は港鮨のサビのにぎり(季節ものなので常に食べられるわけではありません)。上品な脂の旨みが口いっぱいに広がりとても美味しいネタです。背越しの跡もちょっとしたアクセントになり、目で見てもなんだか斬新で楽しめます。
サビは非常に脂がのっている為、軽く炙って頂くのも最高です。
写真は寿し光の丼とにぎり(こちらも季節ものなので要事前確認)です。軽く炙って塩とレモンで頂くのが特徴。口に入れた瞬間さっぱりした旨みが広がって脂の甘みが際立ちます。
焼き魚はもちろん、一夜干しなどの干物にして焼いて食べるのも最高です。
クセのない脂は熱を加えることで、より旨みを増します。また、クセがないからこそ、ハーブなどの香草と一緒にムニエルにして頂くのもワンランク上のサビの食べ方としてオススメです。
写真はペンションすばるで頂いたサビのムニエル(こちらは創作料理です。常時メニューではありません)。香草が効いていてとても美味しい一品に仕上がっていました。
脂がよくのった魚だからすり身にしてさつま揚げにしてもとても美味しいです。例えば、伊豆大島漁業協同組合加工部の「波浮天」にはサビのすり身が入っています。他にも山芋や明日葉などが入った人気商品です。
鮮度がよければやっぱりお刺身です。島内の鮮魚店ではしっかり背ごしまでしてさばいてくれます。旬は11月頃から2月頃までなので、この時期であれば島内でお魚を扱う居酒屋等で目にすることができるかと思います。是非、ご賞味ください。