現代美術家 坂口啓子さん

島に住む心の豊かさを、アートというキーワードで結びつける

伊豆大島に暮らす人にお会いし、お話をお伺いする企画、その名も「島人Focus」。
今回は2011年8月13日-28日(8月12日前夜祭)に伊豆大島の波浮の廃校を利用して開催する波浮港現代美術展の事務局長を務め、その準備に大忙しの現代美術家、坂口 啓子氏にお会いしてきました。

-今回のアートイベントを企画されたキッカケを教えてください。

実は10年以上も前から考えていて、なんとなく夢見ていたというか、想像していました。
2008年から伊豆大島で暮らすようになったのですが、それより以前から美術の分野で長くお付き合いをしていた現代美術家の高田芳樹さんが伊豆大島出身ということをつい最近に知り、彼と計画を進めていくうちに想像していたことが一気に現実化してきました。

それからは、参加アーティストのキュレーションや、メインの会場となる廃校となった波浮小学校の利用許可の申請をするなど、具体的に動いてきました。現在、参加アーティストは国内外より総勢29名にのぼります。作品はインスタレーションが中心となり、ほとんどのアーティストが開催日の1週間前に島に入り作品制作に入ります。

-坂口さんは松葉杖をモチーフとした作品が多いようですがその理由をお聞かせください。

以前、ニューヨークに住んでいたときに、夜中に友人が階段から足を踏み外しケガをしてしまったので病院に連れて行ったのですが、夜中にもかかわらず病院の待合室には大勢の患者がいました。そして、救急車は次々と新しい患者を運んで来ている状態でした。

そんな中、受付の女性が友人の名を呼んだのは、夜が白み始めた頃。非常に簡単な治療を施した後、看護士が案内したのは松葉杖でいっぱいの部屋。そんな光景に私は、笑いがこみあげてきたのです。

この笑いはつまり、悲惨な状態にいる人々に対する必要なこと(現実)との差異・・・受付の軽薄さ、そして使う人を待ち続けるおびただしい数の松葉杖。この何時間かで見たその様々な情景を重ね合わせ、そこから人生の不条理というものを強く感じたのです。

そのことがきっかけで、この気持ちを表すような作品を作りたいと思いました。
ただ、今回の伊豆大島での美術展では、新たな試みの作品を発表する予定です。

-坂口さんのアトリエでのお話を終えて、私達は波浮港現代美術展のメイン会場となる廃校となった波浮小学校を訪れました。

今はこの会場のどの場所にどのアーティストの作品を展示しようか、すべきか、検討を重ねているところです。このイベントが無事に、そして、皆様の心に何らかの動きを感じて頂けたら幸いであると思っています。

昨今、アートイベントを地域おこしの起点に考えている地域は多い。今回のイベントもその類のものかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私が感じたのは、坂口さん、そして今回の現代美術展の協力者の方々それぞれが、純粋に現代美術の魅力や面白さを島民の皆様はもちろん、島を訪れる方々に知って欲しい、という気持ちを持って動いているということ。

そんなアーティストの方々の思いや作品、そして美しい島の風景が重なるこの夏、きっと訪れた人々の心に新しい風が吹くことでしょう。

坂口 啓子さん

坂口 啓子

現代美術家

1951東京都調布市国領町生まれ
1970東京都立青山高等学校卒業
1977多摩美術大学大学院美術研究科油画終了
1989ニューヨーク大学大学院 Art Professions Studio Art 修了